晴れと曇りが入り混じる、暖かくも涼しい秋らしい天候に恵まれた宇都宮森林公園の特設コース。わずか1週間前に来襲した台風19号によって崩れたコースはスタッフの努力の末に復旧され、第28回ジャパンカップが開催された。



毎年早めにスタートラインにやってくる中島康晴と山本元喜(キナンサイクリング)、内間康平(チーム右京)毎年早めにスタートラインにやってくる中島康晴と山本元喜(キナンサイクリング)、内間康平(チーム右京) photo:Kei Tsujiテイラー・フィニー(アメリカ、EFエデュケーションファースト)に声をかけて最前列に並ぶバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)テイラー・フィニー(アメリカ、EFエデュケーションファースト)に声をかけて最前列に並ぶバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji

スタート時点は暖かい太陽の光が差し込むスタート時点は暖かい太陽の光が差し込む photo:Kei Tsuji
合計21チームから120名の選手たちがホームストレートに並び、10時ちょうどに佐藤栄一市長が打ち鳴らした号砲によってレースがスタート。最前列から飛び出した西尾憲人(那須ブラーゼン)がファーストアタックを繰り出した。

地元の大声援を受けて古賀志林道を駆け上がった西尾に続き、前全日本王者山本元喜(キナンサイクリングチーム)らが積極的に仕掛けながら3時間半超の戦いが動き出す。序盤から一列棒状のハイペースで進み、ハーフウェットの古賀志林道の下りでは集団が大きく3つに分断されてしまう。それゆえワールドチーム勢を筆頭に力のある選手たちが前方で展開する状況が続いた。

逃げグループ形成に向けて積極的に動いたのは、9月のJBCF南魚沼ロードで120km逃げ切りを演じていた43歳のフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)だった。2周目のKOM通過後に単独で逃げ、これをワールドチーム勢が追いかけたことで8名のエスケープが生まれる。

最前列から飛び出した西尾憲人(那須ブラーゼン)がファーストアタック最前列から飛び出した西尾憲人(那須ブラーゼン)がファーストアタック photo:Makoto.AYANO
散発的に起こるアタック展開に散発的に起こるアタック展開に photo:Makoto.AYANO集団内を走る別府史之(日本、トレック・セガフレード)集団内を走る別府史之(日本、トレック・セガフレード) photo:Makoto.AYANO

フランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)のアタックから形成されたエスケープグループフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)のアタックから形成されたエスケープグループ photo:Makoto.AYANO
エスケープした8名
ロバート・スタナード(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・メリダ)
ジェームス・ウィーラン(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)
クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
ルカ・ドゥロシ(フランス、デルコ・マルセイユ・プロヴァンス)
マルコ・カノラ(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)
フランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)

今年のジロ・デ・イタリアでステージ1勝とマリアアッズーラ(山岳賞)獲得、続くツール・ド・フランスではマイヨジョーヌを途中着用したチッコーネや、大雨の2017年ジャパンカップを制した経験を持つカノラ、葛飾北斎の絵をモチーフにしたスペシャルバイクを駆るボウマンなど、強豪ばかりで構成されたエスケープ。全ワールドチームがメンバーを乗せたため、宇都宮ブリッツェンやチーム右京、チームブリヂストンサイクリングなど国内コンチネンタルチーム勢がメイン集団を牽く、普段とは逆の展開が繰り広げられた。

出場するUCIワールドチーム全てがエスケープに乗る展開に出場するUCIワールドチーム全てがエスケープに乗る展開に photo:Makoto.AYANO追走する石原悠希(日本ナショナルチーム)とトム・ヴィルトゲン(ルクセンブルク、ワロニー・ブリュッセル)追走する石原悠希(日本ナショナルチーム)とトム・ヴィルトゲン(ルクセンブルク、ワロニー・ブリュッセル) photo:Kei Tsuji

シマノレーシング、宇都宮ブリッツェンら国内コンチネンタルチームがペースをコントロールシマノレーシング、宇都宮ブリッツェンら国内コンチネンタルチームがペースをコントロール photo:Makoto.AYANO
山岳賞に向かって飛び出すフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックス・パワータグ)山岳賞に向かって飛び出すフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックス・パワータグ) photo:Kei Tsuji2度の山岳賞を獲得したクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)2度の山岳賞を獲得したクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Makoto.AYANO

台風19号の爪痕と大会関係者の尽力の跡が残るコース上で、逃げとメイン集団のタイム差は1分半ほどで推移した。このジャパンカップで引退するテイラー・フィニー(アメリカ、EFエデュケーションファースト)や雨乞竜己(キナンサイクリングチーム)は序盤の展開の中で遅れ、中盤までに現役生活にピリオドを打っている。

3周おきに用意された山岳賞で、初回(3周目)はボウマンが、2回目(6周目)は逃げのきっかけを作ったマンセボが、3回目(9周目)は再びボウマンが獲得。この周回で逃げグループからウィーランが遅れを取った。

急ピッチで復旧作業が行われた古賀志林道を走る急ピッチで復旧作業が行われた古賀志林道を走る photo:Makoto.AYANO
メイン集団を牽引するラクラン・モートン(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)メイン集団を牽引するラクラン・モートン(オーストラリア、EFエデュケーションファースト) photo:Makoto.AYANO一気にペースを上げて集団を破壊するロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)一気にペースを上げて集団を破壊するロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Kei Tsuji

メイン集団から脱落した新城幸也(バーレーン・メリダ)メイン集団から脱落した新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji最後まで逃げ続けるジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)とルカ・ドゥロシ(フランス、デルコ・マルセイユ・プロヴァンス)最後まで逃げ続けるジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)とルカ・ドゥロシ(フランス、デルコ・マルセイユ・プロヴァンス) photo:Makoto.AYANO

レースが動いたのは11周目だった。国内チームに代わった海外勢が一気にメイン集団を活性化させ、中でもユンボ・ヴィズマが古賀志林道で組織的なペースアップで逃げる7名との距離を一気に縮め、下りを終えた県道区間で最後まで粘っていたチッコーネとドゥロシをキャッチ。当初逃げ切りの可能性も匂わせた7名のエスケープはフィニッシュまで30kmを残して潰えた。

20名程度に絞り込まれる中、フルメンバーを残すことに成功したのはユンボ・ヴィズマだった。2018年ツール総合5位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ)が逃げ吸収と共にカウンターで飛び出し、トレック・セガフレードのエースを担ったバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)がクライスヴァイクを捉えるも、続けざまにセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)がアタック。黄色いジャージがレースを掌握した。

セップ・クス(アメリカ)らユンボ・ヴィズマが波状攻撃を繰り広げるセップ・クス(アメリカ)らユンボ・ヴィズマが波状攻撃を繰り広げる photo:Makoto.AYANO
独走で残り2周の古賀志林道に向かうニールソン・ポーレス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)独走で残り2周の古賀志林道に向かうニールソン・ポーレス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Kei Tsujiジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が強力に牽引するメイン集団ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が強力に牽引するメイン集団 photo:Makoto.AYANO

先頭グループには「逃げたカノラのおかげで脚を貯め、ユンボのペースアップ時も伊藤(雅和)さんが良い位置まで引き上げてくれたんです」と言う中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)と、来季デルコ・マルセイユ・プロヴァンスへの移籍を発表したばかりの岡篤志(宇都宮ブリッツェン)も食い下がった。

12周目の古賀志林道下りでは来期EFへの移籍が決まっているニールソン・ポーレス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)がカウンターで先行したが、チッコーネにアシストされたモレマが13周目の古賀志林道で吸収し、アタック。ここに食らいついたのはウッズのみで、シーズン終盤のイタリアレースを制した2人の加速によって、これまで優位に運んでいたユンボ勢は崩壊してしまう。マンセボや中根、ディオン・スミス(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)、クスとローバート・ヘーシンク(共にユンボ・ヴィズマ)が追走グループを形成したが、先頭を突き進む2人との間隔は広がるばかりだった。

残り2周の古賀志林道でアタックするバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)残り2周の古賀志林道でアタックするバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) photo:Makoto.AYANO
モレマとウッズを追うディオン・スミス(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット)と中根英登(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)らモレマとウッズを追うディオン・スミス(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット)と中根英登(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)ら photo:Makoto.AYANO3番手で追走するセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)3番手で追走するセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Kei Tsuji

先行するモレマとウッズは、後続グループに対して28秒差で最終周回の鐘を聞く。最後の登りでウッズが先行するもモレマが粘り、互いに見合いながら、サプライズアタックを仕掛けることなく周回後半区間をこなし、残り1kmアーチを通過。ジャパンカップロードレースの勝敗は、昨年大会同様2名によるゴール勝負に委ねられた。

森林公園の入り口手前で、ウッズの背後からスプリントしたモレマ。ウッズも反応したが、1週間前のイル・ロンバルディアを独走で制したモレマが伸びた。勝負を諦めるライバルを確認したモレマが、満面の笑みで2015年に続くジャパンカップ2勝目を挙げた。

これによりトレックは今大会のクリテリウムとロードレースを連勝。これも別府史之とモレマで制した2015年以来となる(当時はトレックファクトリーレーシング)。

牽制すること無くフィニッシュへ進むバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)とマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)牽制すること無くフィニッシュへ進むバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)とマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト) photo:Makoto.AYANO
マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)との一騎打ちを制し、JC2度目の優勝を手にしたバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)との一騎打ちを制し、JC2度目の優勝を手にしたバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) photo:Makoto.AYANO
「ラスト2周の古賀志林道でアタックすると判断した。2015年に勝っているし、コースも良く分かっていたよ。シーズン最後のレースで良い結果を出せると思っていたし、調子も良かったので楽しみにしていたんだ」と語るモレマ。ツール以降に出場した11レース中、8レースでトップ10入り(うち欧州選手権と世界選手権ミックスリレーTTとロンバルディアで勝利)した調子の良さを見せつける結果となった。

最後の古賀志で遅れたものの、残り1kmで復帰し会場を沸かせた中根を含む4名の3位争いで先着したのはスミス。「最後は完全に脚を攣っていたので3位争いに加われなかった」と言う中根はアジア選手最上位となる6位に入り、4分33秒遅れの新城幸也(バーレーン・メリダ)が13位、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が14位となった。

2位マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)、1位バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、3位ディラン・スミス(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット)2位マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)、1位バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、3位ディラン・スミス(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット) photo:Makoto.AYANO
全体6位、アジアンライダー首位となった中根英登(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)全体6位、アジアンライダー首位となった中根英登(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Makoto.AYANO新人賞を獲得したアレクサンドル・ドゥレットル(フランス、デルコ・マルセイユ・プロヴァンス)新人賞を獲得したアレクサンドル・ドゥレットル(フランス、デルコ・マルセイユ・プロヴァンス) photo:Makoto.AYANO

2度山岳賞をトップ通過したクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)、逃げのきっかけを作ったフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)、最終盤の厳しい展開を作ったセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)2度山岳賞をトップ通過したクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)、逃げのきっかけを作ったフランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)、最終盤の厳しい展開を作ったセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Makoto.AYANO
ジャパンカップ結果
1位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) 3時間41分13秒
2位 マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト) +1秒
3位 ディオン・スミス(ミッチェルトン・スコット) +44秒
4位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、マトリックスパワータグ)
5位 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)
6位 中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) +52秒
7位 ニールソン・ポーレス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ) +2分9秒
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
9位 ケニー・モリー(ベルギー、ワロニー・ブリュッセル) +2分31秒
10位 オールイス・アウラール(スペイン、マトリックスパワータグ)

text: So Isobe
photo: Kei Tsuji. Makoto AYANO