平均50.7km/hという歴代最速レースとなった宇都宮ジャパンカップ クリテリウムは、リドル・トレックの鉄壁のアシストと、圧巻のスプリントパワーでジョナタン・ミランが優勝。そのレースの模様をお届けします。





まさに無敵、まさに圧勝。リドル・トレックの鉄壁アシストがジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)の勝利を導いた。
宇都宮ジャパンカップクリテリウムは、コロナ禍での2度の中止を挟みつつ今年で14回目。市中心部を貫く宇都宮大通りを舞台とした往復コースを走る短距離高強度レースで、世界のトップ選手たちがスピードを披露した。
レースに先立ち選手たちは、オリオン通りと交差するシンボルロードから大通りに入り、大観衆の前をゆっくりとパレードラン。曇り空の下、15時40分に1周2.25kmの特設コースを15周回する合計33.75km、時間にして40分ほどのスピードレースが始まった。




今年は号砲と共にマウロ・シュミット(スイス、チーム・ジェイコ・アルウラー)がアタックを敢行。最初からハイスピードな展開からアタックを決めたのはクリスツ・ネイランズ(ラトビア、イスラエル・プレミアテック)。孫崎大樹(ヴィクトワール広島)と寺田吉騎(バーレーン・ヴィクトリアス)が合流したものの、2周目にはメイン集団に引き戻される。
何人もの選手がエスケープを試みる激しい展開の中、レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)とライリー・シーアン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)が飛び出し、さらには集団前方に位置取っていたミランも逃げに合流する展開に。さすがにメイン集団はミランの逃げを許すはずもなく吸収し、決定的な逃げが決まらないままレース時間の1/3を消化した。




イスラエル・プレミアテックが積極的にアタックを仕掛けるものの、集団前方にメンバーを配置したリドル・トレックがその全てをチェックし、追いかけ、潰していく。メタリックカラーの特別バイクで揃えたトレックのメンバーが、ツール・ド・フランスのマイヨヴェール(ポイント賞)をイメージしたグリーンバイクに乗るミランを勝たせるために、そしてジャパンカップクリテリウムのチーム6連勝を達成するために、徹底的な集団コントロールを続けた。
クリテリウム・スペシャル・ライダーズとして走った織田聖は、「集団コントロールをしたいのはトレックだけ。他チームはその状況を崩したかった。トレックがコントロールしている時は少しだけペースが緩むけど、他チームが絶えず攻撃するとペースが上がる。終始アタックが掛かり続ける展開だったのでかなりキツかったです」と集団内の様子を振り返る。





9周目に入ると「明日に向けて脚の感触を確かめたかった」と言うシーアンが単独抜け出しに成功したものの、共に逃げる選手はなし。リドルが徹底コントロールするメイン集団は、他選手のアタックを許さずにシーアンを飲み込んだ。
12周終了時点のスプリントポイントを狙って織田がアタックをかけたものの、そのカウンターでフィリッポ・リドルフォ(イタリア、チーム ノボ ノルディスク)が先着。続いてフェリックス・エンゲルハルト(ドイツ、チーム・ジェイコ・アルウラー)が単独アタックを仕掛けたものの、やはりリドル・トレックの牙城を崩すには至らなかった。



リドル・トレックのパトリック・コンラッド(オーストリア)とジュリアン・ベルナール(フランス)、マティアス・ヴァチェク(チェコ)が風を切ってミランをアシスト。最終周回を回ったタイミングでミランのアシストはチェコ王者ヴァチェク一人になっていたものの、高速レースで消耗していた集団に対しては十分だった。
一人で最終局面を牽ききったヴァチェクの背後から、ひときわ大柄なミランが発進。背後についたミカ・ヘミング(ドイツ、TUDORプロサイクリングチーム)を横に並ばせることなく、まさに圧倒的なスプリントでフィニッシュラインを駆け抜けた。





リドル・トレックにとっては2018年のジョン・デゲンコルプ(ドイツ)、2019年と中断を挟んでの2022年&2023年のエドワード・トゥーンス(ベルギー)、2024年のトムス・スクインシュ(ラトビア)に続くクリテリウム6連覇。またしてもそのチーム力を見せつける結果となった。
33.75kmを走り切るのに要した時間は僅か39分58秒。記録された平均スピード50.7km/hは2023年の49.4km/h(3番は2022年の49.0km/h)を遥かに凌いで歴代最速記録となった。



宇都宮ジャパンカップクリテリウム2025結果
1位 | ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 0:39'58" |
2位 | ミカ・ヘミング(ドイツ、TUDORプロサイクリングチーム) | |
3位 | ヴラット・ヴァン・メッヒュレン(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
4位 | サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック) | |
5位 | ルカ・ヴァン・ボーヴェン(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ) | |
6位 | ヴィト・ブラート(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ) | |
7位 | 岡篤志(日本、Astemo 宇都宮ブリッツェン) | |
8位 | ニコラス・ゴイコヴィッチ(クロアチア、ポギチーム・グスト・リュブリャナ) | |
9位 | コルビー・シモンズ(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
10位 | キャスパー・マティアシュ・コペツキー(チェコ、チーム ノボ ノルディスク) |
宇都宮ジャパンカップクリテリウム2025 スプリント賞
4周回目 | ライリー・シーアン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) |
8周回目 | ライリー・シーアン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) |
12周回目 | フィリッポ・リドルフォ(イタリア、チーム ノボ ノルディスク) |
text : So Isobe
photo: Makoto AYANO, Yuichiro Hosoda